姿勢とあごのずれ、かみ合わせの密接な関係
なかなか治らない、原因がわからない、そんなつらい全身の不調や不快感、痛み、そして、顎関節症は、あごのずれ、かみ合わせの不具合から起きる場合があります。
一般的に、歯科医が語るべきは「歯」や「歯肉」といった口腔の健康のことに限定されると思われていますが、その歯が生えている土台であるあごが、より重要なのです。実は、人体の一番上にある頭と、下あごの関係こそが、全身の健康に重大な役目を担っています。
下あごがずれていると、全身にさまざまなゆがみ、不調、痛みが引き起こされやすくなります。ゆがみ、顎関節症、不調、不快感の原因があごのずれであった場合、あごを正しい位置に戻さない限り本当の原因が取り除かれないのです。
せっかく、整体やマッサージにかかってほぐしてもらっても、またすぐに元に戻ってしまう原因の一つとなっています。
つまり、見た目の歯並びがきれいだからと言って、必ずしもかみ合わせが正しいとは言えないのです。
下あごは頭の重りであり、バランスのスイッチの役目をしています。その結果、その人にとって正しいあごの位置に修正されると、瞬時に様々な改善反応が身体に起こります。
改善反応の例
- 首、肩、腰のコリが瞬時に柔らかく変化する。
- 重心のバランスが良くなり、ふらついていたからだがしっかりしてくる。
- 両腕の筋力が均等化し、力強くなる。
- 身体が軽く感じ、痛みが和らぐ。
- 前屈などの柔軟性が増す。
- まぶたなど、目の周囲のピクピクが減る。
- 視界が明るく感じる。
- 上がりにくかった、腕、肩が、動きやすくなる。など。
一方、同業の歯科医をはじめ、整形外科や内科医、整体師、マッサージ師の方々にとっても、この改善現象の効果はほとんど知られていないのが現状です・・・。
あごずれ・かみ合わせ治療例:74歳女性 A・Mさんのケース
症状
腰痛、頭痛、ひどい首、肩のこり、歩行時の膝痛、足のしびれ、便秘、イライラ等
治療前の状況
椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、外反母趾、高血圧などがあった。
およそ15年前より時々腰痛が起こり、5、6年前からだんだんひどくなった。ひどいときには寝返りをうっても痛くなり、歩き始めや動き始めが特につらかったので、休み休みでないと歩けないこともあった。
整形外科に通いコルセットや薬などをもらっており、整体やマッサージにも時々通っていた。一番ひどいときには、腰椎ブロックをしてもらっていたが、あまり効果がなかった。
歯科医から見た全身の状態
後方にやや傾き、側方的にもゆがんだ姿勢で、側湾もみられた。
姿勢や重心バランスもかなり悪く、重心動揺もある。
しびれの強い右足は臀部から足先にかけてピリピリとした痛みを伴っており、その足をかばうような姿勢をしている。(椎間板も圧縮され、骨棘もできている)
治療の経過
まず、当時使用していた入れ歯の上に顎矯正装置を取り付けて使用してもらった。
症状の改善や様々な検査をしながら装置の調整などを行った。
症状が快方に向かい安定した所で、新しくあごの運動とかみ合わせを考慮した入れ歯を製作した。
治療の成果
背骨の骨の右に出っ張っている部分を中心に、全体的に骨と骨の間の詰まっていた隙間が治療後は広がり、側湾も若干改善した。
さらに、圧迫されていた神経等が解放されたため、痛みやしびれが収まった。
これらは、あごずれやかみ合わせ治療により下あごの位置が正しくなったことで、頭部や全身等のバランスがとれたため、結果的に症状が改善した。
左から治療前→治療中→治療後
治療前:首の骨は自然に前にカーブしているのが正常な状態ですが、治療前は首の骨がまっすぐになっていました。
この状態では頭痛、首・肩のこり、ひどい腰痛などでつらい状況にありました
治療中:装置が入っている状態で、首が徐々に自然にカーブし始めています
治療後:半年程度、装置を入れて生活していただいた後、入れ歯を正しいかみ合わせやあごの位置で作り直しました。首が自然にカーブするようになりました。
あごの位置が正しくなると、ストレートネックで気管や食道の通路が狭かったものが、広くスムーズに改善されてきます。つまり、誤嚥性肺炎や無呼吸症・睡眠の改善にもつながるのです。
※レントゲン写真は整形外科にて撮影
治療後患者さんの感想
腰の痛みがだんだん強くなってきて、しょっちゅう整形外科で痛み止めを処方してもらって飲んでおり、このままではいずれ手術をすると言われていました。
かみ合わせ、あごの位置が正常でなければいろいろな所に痛み、苦しみが出て、それを直すことによって、症状が良くなると言うことを身をもって体験することができました。歯医者さんの治療でこんなことができるなんて夢にも思っていませんでした。以前から入っていた入れ歯も、そんなに不自由を感じていませんでしたが、新しい入れ歯にしてもらってからは、良く噛めるとはこうゆうことなのだと分かり、食事の楽しみが増しました。
また、腰痛を気にしてだんだん運動不足になり、痛いから歩かない、動かない、さらにコルセットに頼っているとよけいに足腰の筋力が低下することに気づかない悪循環になっていたようです。
治療しながら運動を心がけると、以前はものすごく細かった右足にすっかり筋肉が戻り、足のしびれもなくなり快適な日々を送っています。以前のかかりつけの整形外科の先生のところでレントゲンを撮ってもらい、「以前に比べると背骨の状態がよくなってるよ。」と言われ、やっぱりそうなのかと嬉しかったです。
先生には感謝しています。本当にひどかった私が良くなったのだから、私のように腰痛などでいろいろな治療を受けても良くならず、悩んでいる方も手術などを考える前に、一度かみ合わせとあごのずれを診てもらうことを実体験からお勧めします。
人類進化?退化?現代病は減退病(直立二足歩行に進化した人類)
人間が2本足でまっすぐに立ち、効率よく活動していくには下あごをはじめ、様々なバランスの調和、機能の協力が不可欠です。 実は、下あごは頭や全身のバランスを調整するためのとても重要な器官なのです。人間は頭が重力に対して地面と垂直な位置にある状態で立っているからこそ、より脳が発達し効率的に手足を使って活動することができるのです。
ところが、現代人は、便利な生活様式の中で、せっかく直立に立ち上がった姿勢から、前のめりの姿勢を取っていることが多くなっています。
これは姿勢の退化と言えるのではないでしょうか?
あごずれの危険性
頭の重さは約5kgで、ボーリングの玉くらいの重さがあります。下のあごは約500gで、500mlのペットボトル1本分の重さです。
下あごは細い首の骨の上に乗っている重い頭のバランスをとる働きをしています。
下あごがずれると、簡単に頭のバランスが乱れ、首、肩、腰に、痛み、凝り、しびれなどの悪影響が及ぶのです。顎関節症の原因にもなります。
急増するパソコン、スマホのうつむき姿勢によるあごずれ症候群
前のめり、うつむきのままでいることは、約5kgのボーリングの球くらいの重さの頭のバランスが崩れている状態であり、首、肩にすごい負担がかかります。特にうつむいた首にかかる負担は、正常な状態に比べ2~3倍といわれています!
約500gの下あごはずれて固定され、全身のバランスの乱れ、不調への悪循環をおこします。
現代生活で急増する、パソコン、スマホ使用による不良姿勢、うつ伏せ寝、ほおづえ、ストレスによる噛みしめ、食いしばりなどがまさにそのような状態です。整形外科的にはストレートネックと言われ、さらに悪化すると頸椎症、頸椎ヘルニアと診断されます。
また、このようなうつ向き不良姿勢は、気管、肺、食道などを圧迫し、呼吸、咀嚼、嚥下、免疫力にも悪影響を及ぼします。
全身に伝わるゆがみ
私たちは常に重力の影響を受けています。下のアゴがずれると頭→首→肩→胸→腰→足へ歪みの悪影響が伝わっていきます。
その結果、重力に対して骨格全体の構造が崩れてしまいます。そうすると、筋肉の収縮パターン、神経の伝達パターン、血流、リンパの流れが乱れ、内臓の位置もずれ、機能が低下し、それらの様々なストレスにより、メンタル面にも悪影響を及ぼします。
健康面はもとより、スポーツにおいても、より効率的に動くためには、鉛直方向に働く重力と平衡を保てるような体の構造が重要なのです。
バランスのとれた姿勢、および動きというのは、無駄なエネルギーを使わない、きわめて安定した状態なのです。
重い頭を支える様々な筋肉
下のあごは、こめかみあたりからあごにかけての、側頭筋という筋肉によってつり下げられ、振り子のようにバランスをとっています。また、頭の後方は、後頭下筋群、僧帽筋が、脊柱起立筋とつながって重い頭を支えています。さらに、肩甲舌骨筋で肩と下あごがつながっています。
実は、歯と歯が接触するのは、食事の時を入れても、1日のうちで25分程度なのです。通常、歯と歯の間には、2mm程度の隙間(安静空隙)があり、下あごは振り子、おもりの役目をしているのです。
このことからも、噛みしめ、食いしばりは、全身のバランスにとって悪影響を及ぼす原因となるのです。
それゆえに、下あご周囲のバランスの崩れは、筋緊張性の頭痛などの症状を引き起こします。
頸椎のずれ、首、肩の凝りが危険な血流不足を引き起こす
椎骨動脈は、首の骨のトンネルを通ってポンプのように脳に血液を運ぶ役割を果たしています。頭の重心バランスが崩れて、ストレートネックなどの状態になり、首の骨の自然なカーブが乱れ、頸椎にずれが生じると、椎骨動脈に圧迫、引っ張り、ねじれなどの異常な力が加わり、脳への血流が阻害されます。
一方、内・外頚動脈は首の骨の外側を通っていて、筋肉のこりにより、血流不全を起こしやすいのです。結果的に脳が酸素不足となりうつ的な症状の原因になったり、また、脳の血流が悪くなることにより、脳梗塞や、脳出血の危険度を高めてしまいます。また、学力や脳の活性に、首こり、肩こりは、多大な影響を及ぼします。
あごに直結している大事な脳神経
脳神経のうち、一番太い三叉神経の一本は、下のあごに通じています。つまり下のあごは食べる、話すの機能のほかに、頭のバランスをとるという人間の生活にとって重要な役目を果たしています。また、うつむき姿勢などでストレートネックなどになると、脳、脊髄神経が引っ張られることになり、様々なストレスがかかり、しびれ、痛みの原因となります。そして、そのことにより、めまいやメンタル面でのストレスも増大し、うつ的な症状も起こると言われています。
さらに、首を通過し、体温、呼吸、消化、代謝など生命維持のための重要なコントロールをする交感神経や副交感神経などの自律神経の相互バランスを乱してしまうことになるのです。
正しいあごの動きで小顔効果
顔の筋肉である、表情筋、咀嚼筋のシンメトリーなバランスをとっているのが、実は下のあごなのです。口の両サイドにある口角結節(モディオラス)は表情筋の中心軸を形成し、この部分を効果的にトレーニングすることがとても重要です。
あごが正しく機能し、動くことで、筋肉によるポンプ作用が起こり、血液やリンパも良く循環して、小顔やデトックス効果につながります。審美面で優れた効果を発揮します。
頭から足まで、筋肉(筋膜)で繋がっている
身体の筋肉、筋膜は頭から足までつながりを持って全体として構造体を作り、機能、調和しています。このことを専門的にアナトミートレイン(筋、筋膜連鎖)といいます。これは、身体のある部分の不調が、全身にも影響を及ぼすという基本的理論なのです。
全体としては、テンセグリティー構造という生体マトリックスを形成し、様々なエネルギー情報の伝達をしているとされています。
スポーツやトレーニングにおいては、この全身の構造が、重力と平衡を保ち、柔軟でバランスが良い状態を作り出します。それにより、衝撃をより早く吸収でき、けがの防止につながります。また、動作がダイナミックに、スムースになり、運動能力のアップにつながるのです。
TEL:011-624-6443